例えば、「はさみで直線を切る」ことは、はさみを開閉する手の動きと、目で紙とはさみの位置を確認する視覚、そして切り進む方向を決める判断力が必要になります。これらがうまく連携しないと、なかなか思うように切ることができません
また「綺麗な円が書けない」というのは、鉛筆を持つ指の力加減と、手首や腕の動き、そして脳が描きたい形を思い描く力が必要になります。これもまた、複数の能力が組み合わさって初めて達成できるスキルと言えます。
幼稚園・保育園で先生から指摘されやすい点
- 「絵の具で絵を描くとき、筆をうまく使えないと言われた」
- 「はさみで紙を切るとき、紙がぐちゃぐちゃになると指摘された」
- 「ブロックで遊ぶとき、積み上げることが難しいと言われた」
- 「給食の時間、スプーンやフォークを使うのが難しそうだと言われた」
- 「粘土をこねる時、思うような形にならないと指摘された」
- 「お絵かきの時間、線がぐにゃぐにゃになると指摘された」
- 「絵の具での色塗り、色がはみ出すことが多いと言われた」
- 「手遊び歌で手の動きをするのが難しいと言われた」
- 「指先で小さいものをつまむのが難しそうだと言われた」
- 「自分で靴のひもを結ぶのが難しいと言われた」
- 「リズムに合わせて手を叩くのが難しいと指摘された」
- 「クレヨンを持つとき、力が入りすぎて折れてしまうことがあると言われた」
- 「おもちゃを組み立てるとき、パーツを上手くつなげられないと指摘された」
- 「お箸を使ってごはんを食べるのが難しいと言われた」
- 「指で数を数えるとき、一つずつ指を動かすのが難しいと指摘された」
- 「ボタンを掛けるとき、うまく穴に通せないと言われた」
- 「砂場で遊んでいても、具体的な形を作るのが難しいと指摘された」
- 「絵本を自分でめくるとき、ページがめくれないことがあると言われた」
- 「自分で服を着るとき、手を通す部分がわからないと指摘された」
- 「手洗いの時、手の動きが不器用で石鹸が全体に行き渡らないと指摘された」
これらの例は、一部の子どもたちが経験する可能性があるもので、全ての子どもが同じように経験するわけではありません。手先の動きに関する発達は個々のペースによる部分が大きいですから焦らず見守ってあげてください
発達障害の可能性がある例
- 自閉症スペクトラム障害(ASD): 自閉症スペクトラム障害の子供たちは、コミュニケーション(人と話すこと)や社会性(友だちと遊んだり、人と関わること)に困難を感じることが多いです。また特定の興味に偏ったり、同じ動きを繰り返すことがあります。これは「固執」や「反復」の行動とも言われます。手先の不器用さは、この反復的な行動や特定の動作への固執と関連することがあります。ある特定の方法で物を掴む、持つ、動かすことに固執するため、その方法以外で物を扱うと不器用に見えることがあります
- ADHD(注意欠如・多動性障害): ADHDの子供たちは、注意が散漫になったり、じっとしていられなかったり、衝動的な行動をとったりする傾向があります。このため細かな作業に集中することが難しく、手先を使った活動が不器用に見えることがあります。ハサミで紙を切る、きれいな円を描くなどの活動は、集中力と手先の細かな動きを必要とします。ADHDの特性から、これらの活動に挑戦すると手間取ったり、思うように進まなかったりすることがあります
- 学習障害(LD): 学習障害の子供たちは、読み書きや計算などの学習能力に困難を抱えています。しかし、それだけでなく、目と手の連携や、手先の動きをコントロールする「精密動作」にも問題を抱えることがあります。これは「運動協調性障害」や「手先の巧緻性の問題」とも言われ、これが原因で手先を使った活動に困難を感じることがあります
家庭環境・生活環境の可能性
- 手先を使った活動の機会が少ない: 子供が日常的に手先を使って物を作ったり、遊んだりする機会が少ない場合、手先の動きが上達しない可能性があります
- 安全のための過保護: 家庭内での安全を確保するために、子供に対して過度に保護的になると、子供自身が自由に物を掴んだり、様々な動作を試したりする機会が減るかもしれません。
- デジタルデバイスの過度な使用: スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスを過度に使うことで、物理的な動作を行う機会が減り、手先の動きが発達しづらくなる可能性があります。
- 粗方の手先を使った活動が親によって代行される: 親が子供のために着替えをしたり、食事の準備をしたりすると、子供自身が手先を使う機会が減る可能性があります。
- 家庭内の緊張: 家庭内に緊張感が漂うと、子供はリラックスして手先を使った活動を行うことが難しくなるかもしれません。
単なる成長に関しての個人差の可能性
- 手先の力が弱い: まだ筋力が十分に発達していないために、力を必要とする活動(例:はさみを使う)が難しいと感じることがあります。
- 手と目の協調動作が未熟: 手と目の協調動作は幼児期に発達しますが、3歳ではまだ十分に発達していない場合があります。これが円を描いたり、直線を切ったりする動作に影響を及ぼす可能性があります。
- 幼児期の特性: 幼児期は自己主張が強くなる時期でもあり、自分の思うように物事が進まないと感じると、手先の動きに影響を及ぼすことがあります。
- 繊細な性格: 繊細な性格の子供は、自分の思い通りにならないことにストレスを感じ、その結果、手先の動きが不器用に見えることがあります。
これらの例は一部の可能性を示すものですが、子供たちはそれぞれ独自のペースで成長します。手先の動きが苦手な場合でも、それはその子供が他の能力に焦点を当てている可能性を示しているだけかもしれません。そのため親としては、子供の成長を忍耐強く見守ることが重要です
接し方の注意点
三歳児の「手先の不器用さ」について、この年齢では細かい手先の動きや、手と目の協調動作はまだ発達途中で、個々の子供の成長スピードにもよります。まずは子供の成長と発達をじっくりと見守ることが大切と言えます
注意点まとめ
- 三歳児の手先の不器用さは発達の一部であり、成長と発達を見守ることが大切
- 手先の不器用さが発達障害の一部である可能性もあるが、発達障害は一方で突出した才能を持つ可能性もある
- 親の役割は子供の才能を引き出し、伸ばすこと
- 「人に迷惑を掛けない」、「集団行動」、「最低限の常識」を身につけることも重要
理想の接し方
一方で、手先の不器用さを改善するために、日常生活の中で手先を使う機会を増やすことも大切です。例えば食事の際には自分でスプーンを使うように促したり、絵を描いたり、粘土で遊んだりすることで、手先の動きを鍛えることができます
また子供が楽しむことができる環境を作ることも重要です。子供が楽しむことができれば、その活動に対するモチベーションも高まります。その結果、手先の動きが改善されるだけでなく、他の能力も同時に伸ばすことができます
しかし、このすべてが子供のペースに合わせて行われるべきであり、無理に推進することは避けましょう。子供の成長と発達はその子自身のペースで進みます。親としては、その過程を忍耐強く見守り、サポートすることが求められます。
理想の接し方まとめ
- 子供が他の能力に焦点を当てている可能性を考え、その能力を見つけるためにさまざまな活動を体験させる
- 日常生活の中で手先を使う機会を増やし、手先の動きを鍛える
- 子供が楽しむことができる環境を作り活動に対するモチベーションを高める
- 全てが子供のペースに合わせて行われ、その成長と発達を忍耐強く見守り、サポートすることが重要
家庭での会話や行動で出来る改善策
手先の不器用さを改善するために、家庭で行える自然な活動や遊びを紹介しまう
- 折り紙を折る:紙を丁寧に折ることで指先を使う技術を学びます。
- パズルを解く:パズルピースをはめ込むことで手のコーディネーションを向上させます
- クレヨンで絵を描く:繊細な動きで色を塗り形を描くことで、手先の運動を鍛えます
- 粘土で形を作る:指の力をコントロールし、形を整えることで、手指の筋肉を強化します
- ボタンやファスナーを扱う:衣服のボタンやファスナーを使うことで、細かい動きの練習をします
- ビーズを糸に通す:繊細な作業で、細かい動作を鍛えます
- 自分でスプーンを使って食事をする:持ち上げて口へ運ぶ動作で、手のコーディネーションを鍛えます
- 絵本を自分でページをめくる:ページをめくる動作で、指先の技術を向上させます
- 手洗いを自分で行う:水道の蛇口を開け閉めすることで手の力をコントロールする練習をします
- ペットボトルのキャップを開け閉めする:力加減と指先の使い方を学びます
- テーブルセッティングをする:カトラリーや皿を丁寧に置くことで、手先を鍛えます
- 紙飛行機を作る:紙を折り形を整えることで、手指の使い方を鍛えます
- シールをはがして貼る:シールをはがすことで、指の力加減を学びます
- 拭き掃除をする:布を使って物を拭くことで、手指の動きを制御します
- 自分で靴を履く:靴の紐を結ぶことで、細かい動きの練習をします
狙い
- 細かい動作の制御能力向上
- 手指の筋力強化
- 空間認識能力の向上
- モータースキルの向上
- 手と目の協調性強化
- 自己表現力の向上
- 独立性の強化
- 忍耐力と集中力の向上
- 自己達成感の醸成
- 自己自身の能力認識の向上